挫けるな雪歩、いじめに負けるな!

498 :挫けるな雪歩、いじめに負けるな!:2011/01/15(土) 23:10:41 0
「お、おはようございま……きゃっ」
私が事務所に入ると、何かが頭に落ちてきました。柔らかい、布? でも臭い……、
「ぞ、雑巾! 何でこんな」
「わーい、ゆきぴょんがひっかかったー!」
真美ちゃんがニコニコしながら飛び上がっています。
「初歩的な手に引っかかるとは! 誰がかかるかずーっと見てたけど、やっぱりゆきぴょんだったね」
「この時間は、私しか来ないのに」
「まぁねっ! そうそう。それ、トイレの雑巾だから直してきてね」
「ううう……」
私の心は暗く、もう目には涙が溜まってしまいました。


499 :挫けるな雪歩、いじめに負けるな!:2011/01/15(土) 23:11:25 0
髪を手櫛しでとかしながら、トイレに入ると、今度はずっしりとした物が降ってきました。
「あぐっ!」
「わーいっ! ゆきぴょん引っかかったね!」
トイレの床にひれ伏した私の頭に乗っているのは、何本もの紐で出来ていて、湿っている棒……トイレ掃除のモップでした。
「うう、臭いよ亜美ちゃん」
「んっふっふ~。亜美思う、故に真美あり。こういう展開は予想してなきゃだよ、ゆきぴょん」
「そ、そんなぁ」
「ゆきぴょんは罰ゲームで亜美たちの代わりにトイレ掃除ね」
「ひどいよぅ……」


500 :挫けるな雪歩、いじめに負けるな!:2011/01/15(土) 23:12:22 0
トイレ掃除を終えた私が事務所に戻ると、律子さんとプロデューサーが机をはさんで喋っていました。
「雪歩! 何してたんだ、遅刻だぞ」
「す、すみません。ちょっとトイレで……」
「ほんとに、時間くらい守ってくれ。まあいい、ちょっと律子と急な打ち合わせ中だから、今はそこで待ってな」
「はぃ」
そのとき、電話が鳴り響きました。
プロデューサーも律子さんもとろうとはしなかったので、仕方なく私がとりました。
「も、もしもし。えっと、765プロダクションで、あっあははっ」
完全に不意打ちでした。机の下に亜美ちゃんが居て、私の脇をくすぐったんです。変に思ったのか、律子さんがこっちを見ました。いたずらっぽい目でこちらを見ている亜美ちゃんと、顔を怒らせている律子さんが対照的です。
「もしもし。私、週間ビーナスのものです。あの、今よろしいでしょうか?」
「は、はひぃぃ。ふふふ」
必死で笑いを堪えても、どうにもできないことはあるもので、私はおなかの痙攣に耐えることしかできませんでした。
「お、お取り込み中のようなので、失礼します」
相手に切られた瞬間、私のお尻を律子さんが思い切りつねりました。
「い、痛いいいいぃ!」
「じゃ、くすぐったいのは無くなったわね」
無表情でこちらを睨む律子さんは怖いです。
「す、すみません。すみませ……」
「亜美も、くだらないことしないように。さっさとレッスンに行きなさい」
「は、はーい。ごめんなさーい」
「雪歩、私とプロデューサーは今から出かけるけど、電話は取らなくていいから。急で悪いけど、今日の営業は中止。その代わり、一時になったらレッスンに行ってね」
「は、はぃ」


501 :('A`):2011/01/15(土) 23:13:55 0
「たっだいまー、お腹すいたの」
「あ、お帰りなさい」
勢いよく事務所に入ってきたのは、美希ちゃん、真ちゃんに春香ちゃんでした。
「今日の収録大変だったの」
「ラジオとはいえ、緊張するよね。なんか身だしなみに気をつかっちゃったり」
「うんうん。ボクにもよくわかるよ」
「真クンはジャージだから関係ないの」
私と同期のこの三人は、トリオを組んでもう二ヶ月。今では地方のラジオにレギュラーをもつ、私と違ってもう立派なアイドルです。
普段から仲が良く、私もこういう友達がいれば、といつも思います。
「きょ、今日も調子良かったみたいだね」
思い切って話しかけたんですが、タイミングが悪かったのか、三人はきょとんとして私を見てきました。
「……」
「……」
気まずい沈黙。
「そういえばさ、今日音響さんがね」
春香ちゃんが、美希ちゃんと真ちゃんに喋りかけます。話しかけなければ良かった。私の勇気はみるみるしぼんでいきました。


502 :挫けるな雪歩、いじめに負けるな!:2011/01/15(土) 23:16:01 0
「ちょっと待って春香!」
そんなとき、突然美希ちゃんが俯いて座っている私に近づいてきたんです。
「……雪歩」
「な、ななななんでしょう?」
まさか話しかけてくれるとは思わなくて、思わず敬語になってしまいました。心臓がドキドキしています。
「雪歩、なんかウンコ臭いの」
「……」
そうでした。さっきまでシャンプーの香りがしていた私の髪は、もうトイレの臭いしかしなくなっていたんでした……。
「えーっ。何それ。……うわっ、ホントに臭い!」
春香ちゃん大喜びで私に近づいてきます。
「わっ。ちょっと触っちゃった! 美希、タッチ!」
「ちょっ。雪歩菌なの!」
「美希、ボクには近づかないでよ」
三人は私から少し離れて鬼ごっこを始めました……。
「あ、あのぅ」
「雪歩は黙ってて! あと半径三メートル以内に近づかないで」
「そうなの。臭いもん」
「ま、まことちゃん」
「……。くっそー、今春香に雪歩菌をうつしてやるぞっ」
真ちゃんは私の声が聞こえなかったかのように春香ちゃんに突進していきます。私にはそれが限界でした。
「ひどいよぅ。みんな」
急に顔が熱くなり、目に涙が溢れてぽろぽろと流れていきました。
「なんでそんな酷いことするの? もうやめてよぅ」
言葉に出すと、ますます悲しく、私の涙は止まりませんでした。
さすがに三人は鬼ごっこをやめ、私に目を向けてくれました。
「あのさぁ、なんで泣くわけ?」
「そうだよ。いじってもらってるだけ、おいしいって思わなきゃ」
真ちゃんに続いて、春香ちゃんが言います。
「空気読めてないよ、雪歩」
「うん、うざいの」
美希ちゃんの言葉が私の胸に突き刺さります。
何も言えなくなった私を置いて、三人は帰ってしまいました。
みんなでたるき亭にお昼ご飯を食べるそうです……。
もうすぐレッスンの時間です。私は早めに行って、シャワーを浴びることにしました。

つづく?

  • 最終更新:2011-03-14 11:01:48

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